今日の日記を読む前に、まずは
昨年7月20日の日記を読んでほしい。
今日、'98年に小笠原で知り合ったNさんと、1年ぶりに会って飲んだ。
実は7月ころに「飲みませんか」というメールをもらっていたのだが、
前回はわたしが仕事のためにドタキャン。
仕切り直しで、今日飲むことになった。
Nさんは去年と変わらず、元気そうに見えた。
地元の駅で待ち合わせ、「何食べたい?」と聞いたら、
彼は「肉!」と即答したので、焼肉屋に行った。
まずはビールで乾杯。
そして、しばらくたって彼が切り出した。
「実は、報告しなければならないことがあるんです」
「えっ!? なになに? ついに結婚決まったの?」と、わたし。
昨年飲んだときに「結婚したい人がいる」と言っていたNさん。
別れ際に「今度飲むときは彼女、連れてきますから」と言っていたNさん。
彼の口から次に出た言葉は、わたしを凍らせた。
「彼女、自殺しちゃったんです」
「何月に?」
「6月」
「そうなんだ……」
彼女は心の病で入退院を繰り返していた。
6月のある日、ふたりで買い物に行き「じゃあね」と別れたそのあとで、
彼女はマンションから身を投げたのだという。
Nさんのもとには、かわいい黄色の自転車と、
4月にNさんがプレゼントしたアメリカン・ショートヘアーが1匹残った。
Nさんはその自転車に乗ってO駅までやってきて、
会話の中には何度となくアメショーの“みーちゃん”の話が出た。
彼は“みーちゃん”を飼うために会社の寮を出て、一人暮らしを始めたのだという。
そもそもいまの会社に勤めたのも、彼女のためだった。
「残念だったな。一度姉さんに紹介したかったのにな」
Nさんはそういって微笑んだ。
わたしはなんといっていいかわからなかったけれど、
北海道の山の話や沖縄の海の話などをいろいろして、
帰り際にNさんが「今日は久々に楽しかった」と言うのを聞いて少しほっとした。
彼はすごく純粋で、
生きていくための計算高さやあざとさをまったく持ち合わせていない類の人間だ。
早く心の傷が癒えればいいなと思う。
「なぜかな、夢にはまったく出てこないんですよ。
わたしは出てきてほしいと思ってるんですけどね。成仏してるってことかな」
そうだよ、きっと。
生きていくことって難しいことなのか、簡単なことなのか。
この歳になっても、まだわたしにはわからないけれど、
一つだけ言えるのは、自分ひとりで生きているわけではない、ということだ。
とりあえず、わたしは幸せに生きてます。
9月の宵の、心地よい風を受けながら。