(お約束の言い訳)
この日記は11月17日に書いています。
毎日、毎日、新しい出来事いっぱいで、早くもこの日の記憶が曖昧に……。
朝、神集島に渡るべく、3日間滞在した宿を離れた。
神集島に渡れば、佐賀県の7つの島、すべてクリアである。
加唐島、小川島と、宿泊を断られていたので、
ここもダメかな、と思ったのだが、
「うちは4名からなんです」という民宿D荘の奥さんに、
「そこをなんとかっ!」といって宿泊を頼んだのが、2日前。
それでも1泊だけなので、ちょっと慌しい滞在になるかもしれない。
神集島への船は湊というところから出る。
呼子からバスに乗って、湊へ。
湊○○と名のつくバス停はいくつかあったので
(湊、湊入口、湊支所前etc...)
神集島に行くにはどこのバス停で降りればよいか運転手に尋ねたところ、
まったくわからない、聞いたこともないという。(゚Д゚#)
幸運にも湊のバス停から乗ってきたおばあちゃんが
「湊支所前で降りるといい」と教えてくれた。
神集島は、沿線のバスの運転手すらわからない
マイナーな存在なのだろうか?
船客待合所はバス停から5分ほどのところにあった。
出港まで30分以上あったが、
待合所にはすでに、小上がりで眠りこけているおばあちゃんと
簡易郵便局の局長兼神集島の区長がいた。
50代半ばと思われる局長は、ちょっと話したらなかなかおもしろそうな人だった。
神集島は、地図で見るとミジンコみたいな島だ。
神功皇后にまつわる伝説が残り、
736年に大阪を出発した遣新羅使の船が立ち寄った歴史もある。
その折に詠まれた万葉の歌・7首が歌碑となって島に点在し、
それを目当てに島を訪れる人も多いそうだ。
今日も天気がいいので、島を歩いていてとても楽しい。
黒瀬という港で護岸壁に寄りかかって昼メシを食べ、
夕方にはほぼ島を周り終えた。
最後に鬼塚古墳というところで古墳を見ていたら、
「おーい!」と局長。
郵便局の制服を脱ぎ、すっかり作業着(私服?)に着替えている。
「いま姿が見えたからそうじゃないかと思って」声をかけてくれたそうだ。
なんでもこの局長、山でイノシシを飼っているという。
「いまから餌をやりにいくので行くか?」と聞かれたので、
二つ返事でクルマに乗る。
「いまカミさんがいないから、女性を乗せてると冷やかされそうだなぁ」と局長。
わたし「どこかお出かけなんですか?」
局長「ジャスコ行くって出てったきり、今日は帰るだろう、明日は帰るだろうと思って、4年になった」
……。実にツッコミにくい回答である。
わたしが困惑した表情を浮かべていると、
「いやー、冗談だけど。ホントは親の介護があって島を出ている」とのこと。
この島は高齢者の比率が全国でも屈指ということで、
局長は、年寄りのおもりから雑用まで島のことを全部やっていると言っていた。
子供たちはみな島を出て働いているそうで、
イノシシの餌やりが終わったら、自分の親のために夕食の仕度にとりかかるという。
泣かせる中高年である。
夏の間だけオープンする蜘蛛の巣だらけのキャンプ場の一角に、
島で捕まえたというイノシシがいた。
1頭は相当デカイ。体重100kgは優にあるだろう。
もう1頭は、縞が消えたくらいの子供で、ビーグルくらいの大きさだった。
デカイほうはもう2年くらい飼っていて、もうそろそろ食べ頃……らしい。
おバカなイノシシはすっかり人に懐いていて、
小屋の戸を開けて外に出しても帰ってきてしまうのだそうだ。
局長が頭皮を洗うブラシでゴシゴシブラッシングすると、
気持ちよさそうにしていた。
なんかカナシス。(ノД`)
それから島をぐるっと周ってもらって、いろいろな話を聞いた。
3年前の福岡西方沖地震のとき、
住吉神社の鳥居や石灯籠はすべて倒れ、
いまの鳥居や燈籠はすべて修復されたものであること、
鳥居の一部分だけ石が新しいのは、そのためであること。
その前日に住吉神社でお祭りがあり、
一日ずれていたら多数の死者が出ていたかもしれなかったこと。
島には、かつて秋田のなまはげのような行事があり、
祭事のときに獅子舞のような面をつけて各戸を回っていたが、
いまは廃れてしまったこと。
かつて10軒近くあった宿も、いまは1軒だけになってしまったこと……。
対岸からわずか5分たらず。
でも、沿線を走るバスの運転手にすら存在を知られていない神集島。
静かで、穏やかで、海の眺めもいい島だが、
対岸の集落もみなそんな雰囲気だから、
わざわざ海を渡ってやってくるのは、わたしみたいな島おたく、
あるいはよほど万葉の歌に興味のある人しかいないに違いない。
ここは、のんびり歩くには、とってもいい島です。
だからみんな、行ってみてねっ!
島の名前は「かしわじま」です。
↓1段目左・湊から見た神集島全景。右・島のかたちがミジンコみたいでしょ?
2段目左・海水浴場の水はとてもきれいでした。
中・黒瀬から高島を見る。この高島は、昨年の11月17日に行った島です。
リバースアングルは
この写真。1段目の右側の写真には神集島も写っています。
右上・集落はこんな感じ。右下・無心に餌を食べるイノシシちゃん。
3段目左・こんな感じで島の7箇所に万葉の歌碑が設置されています。
右・無理言って泊めてもらったのに、夕食は豪華。ウニの炊き込みご飯もでました。
D栄荘は1泊2食で6500円ナリ。